反論書
2011年12月12日
審査庁
愛媛県知事
中村 時広 様
審査請求人 加治政広
請求代理人 盛次義隆
1. 事件の表示
2011年8月12日付で提出された審査請求人である加治政広が申請した生活保護について、みなし却下された事件
2. 反論の趣旨
処分庁の行った処分が不当であり、違法であることを認容し、処分の取り消しを求める。
3. 審査請求書記載事実について
処分庁の弁明書によると、生活保護申請日時については弁明書どおり、8月19日であったことを認める。
4. 本件の経過
おおむね処分庁の本件の経緯に沿っているが、食い違っている点を次に示す。
平成23年8月23日、生活保護申請書を松前町職員に持ち帰らせたとあるが、地方局との連絡は松前町福祉課十時係長が実施しており、9月26日に十時係長に連絡した際に、申請書はどこにあるかと尋ねたところ、中予地方局にあるままですと答えている。つまり、申請書を処分庁が持ったまま、松前町福祉課を使って取り下げるよう圧力をかけたことを示している。あるいは、松前町福祉課十時係長が虚偽を言っているかのどちらかであるといえる。また、申請内容の変更を求めるためには提出された生活保護申請書を審査請求人に示し、変更内容を伝えることが必要と考えられるが、提示することも一度も無かった。
10月13日の家庭訪問とあるが、何をしたのかの記載が無い。玄関まで来ただけで、申請者の母親が居ないことがわかると申請者と話すことも無く、帰ろうとした。きちんと話してくださいという本人を無視して帰ろうとするので、その場にいたヘルパーもあきれて「失礼じゃないですか」と抗議している。
5. 本件経過の特徴
見なし却下となる30日間を過ぎた責任を処分庁に伝達するだけに過ぎない地方自治体である松前町に責任転嫁し、その後に審査し、却下したというきわめて不自然なものである。
6. 弁明書における審査請求に対する意見への反論
(ア) 見なし却下に関して
処分庁は行政手続き上の問題はあるものの、結論において正当であり本件審査は棄却されるべきものと主張する。
行政手続き上の問題をとても軽く見ているのではないだろうか?生活保護法で見なし却下が規定されており、審査請求の権利が示されているのは生活保護申請者の困窮した実態に鑑みて、一刻も早い適正な審査を受け、処分決定を受けることが示されているものである。それを単に行政手続き上の問題はあるものの、結論において正当でありとするのは行政の驕りであると言える。違法操作をしても、拷問をしても犯人が間違いなければいいのだという論理に通じよう。
この問題だけでも、その後に出された生活保護法第10条の規定での却下自体、当てにならないもので、検討するまでも無く、本人収入が最低生活費を上回らない限り、生活保護の決定をすべきである。
(イ) 最低生活費(保護基準額)の算定について
弁明書では、審査請求人の保護基準額を100,680円としているが、その明細が記載されておらず、根拠が無い。審査請求人は右手の指先が震える程度に動かせるだけの重度の身体障害者であり、松前町から毎日10時間の重度訪問介護を受けているが、圧倒的に不足しており、母親が見守りに来ている状況である。この場合、生活保護では介護人をつけるための費用としての加算が認められており、障害の程度では、他人介護料特別基準大臣承認を受けられる程度であるため、平成23年度の加算額では13万8700円となっており、それだけでも処分庁の示す100,680円は超えている。通常、生活保護申請があった場合、加算に関する調査や医療費などにかかわる調査を実施するが、それがなされていない。
(ウ) 松前町の調査報告書に関して
生活保護法第29条は以下である。
第二十九条
保護の実施機関及び福祉事務所長は、保護の決定又は実施のために必要があるときは、要保護者又はその扶養義務者の資産及び収入の状況につき、官公署に調査を嘱託し、又は銀行、信託会社、要保護者若しくはその扶養義務者の雇主その他の関係人に、報告を求めることができる。
つまり、資産及び収入の状況についての報告を求めることができるわけだが、それ以外の個人的な情報、多くは障害者自立支援法に基づく相談業務で知りえた情報が加えられており、その漏洩といえる。地方公務員法違反、個人情報保護法違反の疑いがある。したがって、証拠能力はない。そして、現在、重度訪問介護の決定処分をめぐり、処分庁の松前町を相手取り審査請求中であるため、利害対立者の書証である。内容的にも話の一部のみを流用したものといえ、悪意が認められ、信用に値しない。
(エ) 民生委員意見聴取について
この民生委員意見聴取ではっきりすることは、生活に困っていることである。処分庁が生活保護の専門職であれば、まずこの点を重要視すべきなのではないか。本来、民生委員への意見を聴取する場合、普段の生活ぶりを尋ね、真に生活に困っているかどうかを確かめるためのものである。尚、民生委員はいつも審査請求人宅にいるわけではないので、審査請求人の母親が実家に足しげく通っている姿は知らないものである。
(オ) 教示義務について
審査請求人は、今回初めて生活保護を申請した。行政を信じて、決定が出るのをずっと待っていた。代理人をして、松前町福祉課十時係長に9月24日ごろに尋ねると、宙に浮いたままとの回答。厚労省と話して、愛媛県と連絡を取り、調査をしてもらったら、10月31日の段階でまだ受理されていないとのことだった。とてもつらい思いをした。たとえ、生活保護を申請しても、相談扱いとされるのできちんと文書で提出することと聞いてはいたが、文書で提出しても宙ぶらりんのままでいつまで行くのだろうかと。今回、弁明書を見て初めて10月の段階は生活保護の審査ではなく、取り下げさせるための圧力であったことがわかった。生活保護について調べてみて、見なし却下というものがあることと審査請求ができることを知った。それなら対応方法があるわけで一安心できた。
(カ) 母親の負担への救済を考えてほしい
審査請求人は昨年に頚椎の手術を受け、7月に退院したが、寝返りを打つことも手足の場所を移動させることもできない。身体の数箇所に褥創ができては治っている状況である。81歳の母親は重度訪問介護が入らない時間帯をカバーしてくれているが、もう限界である。ボランティアにも限りがある。一刻も早く、母親の負担を軽減した上で、審査請求人は自立した生活を送りたいのである。生活保護申請をしたら、却下されただけでなく、何も知らない他人から、母親の実家の家を売れ売れと強要され、年老いた母だけを執拗に攻める、そんなやりかたが許されるのですか。審査で例え処分庁の処分が取り消されても、これからもいじめられたら、母親の命は持ちません。人間の尊厳を尊重できる職員となるような教育を処分庁で実施するように意見をつけていただきたい。
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