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医療法人 きらりは、地域に根差した医療施設・介護施設として心をこめたサービスを提供しています

TEL. 089-961-6900

〒791-3120 愛媛県伊予郡松前町筒井1540

在宅療養支援診療所の上手な使い方

在宅医療に不安をお持ちの方の疑問にお答えします。

1.病院医療と在宅医療のどちらがいいの?

 答えはどちらもいいところもあり、悪い所もありで一概に決められず、利用者が上手に利用するのが一番です。10年以上も前のことですが、福祉の進んだ北欧で、福祉をハンバーガーにたとえて、マグドがいいかモスがいいかっていう議論がありました。イメージとして、マニュアルで画一化されて誰が作っても同じ味になるやや乾いたマグド的な福祉が良いか、ちょっとねっとりとしているけど少し濃い味で時間がかかるモス的な福祉がいいかってことです。結論はどちらもお客さんがあるわけでどちらもあっていい、一概に決められないというものでした。私もそう思います。病院医療にするか在宅医療にするか、どちらもいいところもあるし欠点もあります。要はそれを利用する患者さんや家族がそれぞれの医療機関と十分に話して、理解しあって、納得して双方のいいところを上手に利用することが大事です。簡単に身を任せず、自分で納得がいくまでしっかり味見をする、そうして最後は自分で決めることです。目安として、親身にその相談に乗ってくれる医療機関が信頼できる医療機関だと思います。
 
2.世代間の経験の違い

 相当昔は、と言っても戦前までですが、世間一般の医療の現場は在宅でした。病院医療は未熟で、不完全でした。ですから、亡くなる場所は自宅が普通でした。今の75歳以上の高齢者の常識として、生を受けるのは自宅で産婆さんが来て出産、亡くなるのは自宅で医者に看取られてが普通でした。
 戦後、高度経済成長と共に医学が発達し、病院医療が急速に成長しました。それと共に、生を受けるのも死を宣告されるのも病院になりました。その時代を享受してきたのが、今の50代、60代です。
 すると、自宅で死にたいと考えているのは、かつて自宅で死を看取ってきて、今死を迎えようとしている高齢者で、それを見送るのは自宅で死を看取ってきていないその子供たち。当然意識にはギャップがあり、見送る側としては病院任せになるわけでは無いので怖いです。いきおい、病院に入院させたいという気持ちが働きます。私たちはその気持ちを理解しつつ、お年寄りの自分のうちで最期を迎えたいという意思を尊重できるようにそれとなく動きます。
 
3.在宅療養支援診療所の上手な使い方

 昔は隣近所のご隠居さんも自宅で息を引き取っていましたが、今はそのご隠居さんを看る家族がみんな働いているか、一人暮らしか老夫婦だけって世帯が普通です。家族が入院した、手術したって話しはよく聞きますが、おじいちゃんをみんなで見送ってあげたよとか、お隣さんはヘルパーさんが見送ってあげたそうですよ、ひっそりとお葬式を挙げて、ご自分が用意されていたお墓に入られたんだってなんて話はあまり聞きません。

 どこの病院に入院したらどうだったかとか、経験者はいろいろ語ります。だいたい私たちはこういう情報に強いです。医療機関だけじゃなくて、施設も介護保険サービス提供機関についてもいろいろ知っています。どの業界でもその業界に携わっている人しか知らない情報があるのと同じです。どこにも良し悪しはあり、その人その人に見合った機関に紹介させていただいてます。

 在宅診療について説明いたします。

 一般的な説明を記載しても分かりにくいので、具体的な例で説明しましょう。
 ある糖尿病の女性の方です。連れ合いの方との二人暮らしで、インシュリンで治療されていた方です。大腿骨頚部骨折の後遺症で、歩行器でようやく数メートルは歩ける方です。視力低下もあるので、インシュリンは連れ合いの方が手伝っておられました。入浴はお二人ともデイサービスを利用しておられます。通院が困難ですので、往診して 診ておりました。

 これが通常の在宅医療です。在宅医療の実施に際しては、「通院が困難である」ことが絶対の条件です。 自分で通院ができるなら来てください。往診や訪問診療(予定された往診、予め期日が決まっている往診)はできません。

 ある日、激しい幻暈と嘔吐、右手の振戦、そして軽い左不全麻痺(左上下肢の軽い麻痺と考えましょう)が起きました。麻痺は一過性でした。

 入院はいやとおっしゃいます。検査もいやと。

 その年、糖尿病で娘さんを亡くされました。本人も病状の進行とここ1,2年で自転車に乗って、通院していた状態から歩行器でようやく動ける程度まで機能が落ちてしまい、いつお迎えが来ても受け容れられる気持ちになられていました。その上、前回の入院でとても辛い目に遭い、もう入院はこりごりだと。様々な複合的な要素があり、連れ合いの方も好きにさせてやりたいとおっしゃられていました。私に対しては信頼がありますので、先生の思うように家で治療してやと言われます。

 検査もできず、対症療法と、急性期の医療を実施し、病態は元通り改善しました。でもその間はボランティアの人々と、ご家族、デイサービス職員などでケアマネとサービス担当者会議を開き、綿密な介護体制をとりました。結果的に、ずっと付き添っているのと同じ状況となり、入院よりは恵まれた体制でした。ご承知のごとく、入院中は、定時の訪問しかありませんし、ずっと付き添うのは職員の役割ではありませんよね。

 でも、何でも希望通りっていうわけではありません。死にたいから、楽に死ねる注射をしてくれって時々言われることがありますが、絶対にしません。また、放っておいて欲しいと思われる時でも放っておけないこともあります。この間、自閉症がある方がとても強い貧血となった時、本人は放っておいてくれと言われました。それでは死んでしまうことが明確に予測されるので、県立中央病院と連携を取って、消防隊と一緒に簀巻きにして救急搬送してしまいました。助かって、今はお元気になられましたが、後悔することがない範囲で治療を押し付けてしまうこともあります。

 この前に開催されました別の人のサービス担当者会議での一こまです。冒頭、どこで最期を迎えたいのですかっていう本人さんへの質問から入りました。一人暮らしで90歳を優に超え、子供たちが弱ってきて、掃除にも来にくくなってきて、段々と人が住む環境じゃなくなってきている状況でした。頑なにサービスを嫌い、ヘルパーを拒否されて居りました。自分でできる、自分でできると言いつつ、時々清潔では無い状況でした。

 最期はこのうちで迎えたい。それならみんなでお願いです。どうかヘルパーさんを働かせてやってください。ああ、ありがとうございます、ありがとうございます。めでたくヘルパーさんが働けるようになり、部屋もきれいになりました。こんなことも在宅療養支援診療所はお手伝いします。とにかく気持ちよく好きな所で最期を迎えられるように、しかも最期まで自分らしく。

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